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離婚して自宅を相手に渡したときの税金の話

松田篤史
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松田篤史
東京都国分寺市で開業している税理士。小さな会社と個人事業に特化した会計事務所を経営しています。 毎日の通勤電車が苦痛だったため都下で開業しました。マラソンが趣味なのでよく小金井公園を走っていますw
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人生、出会いもあれば別れもあります。

国の調査によれば、平成28年には216,798組の夫婦が離婚しました。
厚生労働省の資料をみると、平成8年の離婚件数が年間20万件を超えてからは、現在まで一度もそれを下回ることなく推移しています。

厚生労働省人口動態調査↓
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suikei17/dl/2017toukeihyou.pdf

では、離婚にともない財産分与があった場合に当事者が税金を払う必要はあるのでしょうか?

もらった場合

Present motsu woman

原則として、もらった側に贈与税や所得税が課されることはありません。
国税庁タックスアンサーNo.4414

 

つまり、お金で払ってもらった場合に受け取った側で所得税や贈与税が課税されることはありません。

また、自宅などの不動産を譲り受けた場合にも受け取った側で所得税や贈与税が課税されることはありません。

具体的にイメージしやすいように、例として夫(太郎)と妻(花子)の財産分与のケースを考えてみましょう。

離婚の結果、財産分与として太郎さんが花子さんにお金と自宅を渡す場合、もらった花子さんには所得税も贈与税も課されない、ということになります。

 

なお、上記タックスアンサーNo.4414でも述べられているように、もらった財産が多過ぎる場合にはその多過ぎる部分に贈与税が課税される可能性があります。

では、「多過ぎる」っていくらぐらいなの?ということですが、最高裁の判例で約18億円相当の財産をもらっても「多過ぎない」とされたケースもあり、一概に金額だけで判断できない部分があります。このあたりは金額だけでなく、その他の状況も踏まえ総合的に判断する必要があるでしょう。

 

また、税金を払いたくないがために離婚を装って財産の移転を図った場合も、それがバレれば当然に贈与税が課税されます。

 

それから、花子さんには所得税や贈与税はかかりませんが、自宅=不動産をもらった場合は所有権の移転登記を行います。この場合には登録免許税はかかってしまいます。

 

あげた側

Tatemono myhome

離婚にともない夫(太郎)は妻(花子)に財産分与としてお金と自宅を渡しました。

このケースでは太郎さんは自宅(=不動産)を花子さんに譲渡したと考え、譲渡益がある場合には、所得税と住民税が課税されます。

「え!?あげただけなのに税金払うの?」と思ったそこのあなた。
あなたの考え方は至極まっとうな庶民感覚です。

しかし税法の世界においては、財産分与で不動産を渡し、税法ルールに則って計算したところで譲渡益がある場合には、渡した側に所得税(及び住民税)が課税されてしまうのです。

 

そもそもなぜ課税されてしまうのか?

財産分与で自宅(=不動産)を妻(花子)に渡した太郎さん。太郎さん自身は渡しただけで目に見える対価を何も受け取っていません。

通常、課税されるからにはなにがしかの対価を得て渡しているから課税されるはずです。
なのになぜ?と思うのが普通の感覚ですよね。

しかし、法律の世界では、太郎さんは対価を受け取っていると考えます。その対価とは「財産分与義務の消滅」という経済的利益です。

 

もう少し詳しく説明します。

太郎さんと花子さんの離婚が成立したことで、そこに財産分与の権利義務が発生します。このケースでは太郎さんに財産分与の義務が発生するわけです。
「太郎さん、あなた、花子さんに財産をわたさなければなりませんよ」という義務です。

話し合いの結果、具体的にはお金と自宅を花子さんに渡すということになりました。
そこで、太郎さんはお金と自宅を花子さんに渡しました。

そうすると、太郎さんの財産分与の義務は消滅します。
つまり、財産を渡すことで義務の消滅という対価を得ているわけです。

 

ピンとこないひとは、こう考えてみてください。

借金のカタに自宅を明け渡した場合にも、本人には一銭も入りませんが、同じように所得税がかかります(一定の要件を満たすことで非課税所得に該当すれば課税されないこともありますが)。

この場合も、自宅という財産を渡すことで、「借金を返済しなければならない義務の消滅」という対価を得ていると考えるわけです。

「財産分与義務の消滅という対価を得ているから所得税を課税します」というのと似ていますよね。

 

自宅を渡したら確定申告を忘れずに!

元夫である太郎さんから元妻である花子さんへ財産分与として自宅が渡された場合には、太郎さんのほうに所得税及び住民税が課税される可能性があります。

ただし、課税されるのはあくまでも「譲渡益」部分です。
不動産を譲渡した場合の譲渡益は次の算式で計算します。

収入金額ー(取得費+譲渡費用)=譲渡益(又は譲渡損)

更に、渡した不動産が一定の要件を満たす自宅の場合には、「譲渡益のうち3,000万円までは課税されない」という特例があります。

従って、要件を満たす自宅を元配偶者に渡した場合で、計算した譲渡益が3,000万円までに収まるときには、結果として課税はされないことになります。

譲渡益が3,000万円を超える自宅って、ケースとしてはそう多くはないと思います。
立地がものすごくよくて地価が下がっていない、いやむしろ上がっている(=収入金額が高額になる)とか、取得費の金額が僅少になる(大昔に取得した際の取得費を引き継いでいる、あるいは取得費がわからん(泣))などのケースに当てはまる場合には、3,000万円を超える可能性がありますが。

 

どうですか?少しほっとしますよね。

また、仮に譲渡益が3,000万円を超えてしまって課税されるとなった場合でも、所有期間が10年を超えているなどの一定の要件を満たせば、「軽減税率の特例」を受けることもできます。

 

このほかにも状況によっては

財産分与で自宅を元配偶者に渡して譲渡益があるひとが、新居を購入したときの特例

財産分与で自宅を元配偶者に渡して譲渡損があるひとが、新居を購入したときの特例

財産分与で自宅を元配偶者に渡して譲渡損があるひとで、渡した旧宅の住宅ローンをまだ返済しているときの特例

を適用できる可能性があります。

 

ただし、確定申告しなければ、これらの特例は受けられません!

 

また、仮に何もせず放置していたらどうなるの?という疑問が湧くかもしれませんが、税務署は不動産の登記情報に基づき所有権の移転があったことを把握しますので、いずれ「お尋ね」があります。遅かれ早かれ把握されますので、申告期限までに確定申告されることをオススメします。

 

ところで「収入金額」はどう計算するのか?

上述のとおり、財産分与にて自宅を元配偶者に渡すと不動産の譲渡があったものとされ、譲渡益があれば所得税と住民税が課税されます。

譲渡益(又は譲渡損)は以下の算式で計算されることはすでにお伝えしましたね。

収入金額ー(取得費+譲渡費用)=譲渡益(又は譲渡損)

ここで、多くの方は疑問を持つはずです。
「対価となるお金を受け取ったわけではないのに、収入金額っていくらになるの?0円?」と。

 

一般的な感覚では確かに「0円」かもしれませんが、それでは譲渡益は発生せず課税できません。
そこで、税務署ではこの収入金額を「財産分与時の時価」として計算するよう通達を定めています。

所得税基本通達

(財産分与による資産の移転)
33-1の4 民法第768条《財産分与》(同法第749条及び第771条において準用する場合を含む。)の規定による財産の分与として資産の移転があった場合には、その分与をした者は、その分与をした時においてその時の価額により当該資産を譲渡したこととなる。(昭50直資3-11、直所3-19追加、平18課資3-6、課個2-11、課審6-5改正)

(注)

1 財産分与による資産の移転は、財産分与義務の消滅という経済的利益を対価とする譲渡であり、贈与ではないから、法第59条第1項《みなし譲渡課税》の規定は適用されない。

2 財産分与により取得した資産の取得費については、38-6参照

 

では「財産分与時の時価」とはいくらなのか?という話になりますが、ここは「正解が一つではない世界=税理士の腕の見せどころ」となります。

 

【土地の場合】
・路線価に基づく財産評価を行い、近隣の公示価格比準により算定する
・土地が移転した年の1月1日と移転時の地価変動率が小さければ、路線価に基づく財産評価額を0.8で割り戻した金額を簡便的に時価とする
・不動産鑑定評価の金額を使う
・評価時点からさほど遠くない時期に売却された場合にはその取引価格を使う
など

【建物の場合】
・取得費相当額の未償却残額(「建物の標準的な建築価格表」を使う)
・固定資産税評価額
など

 

前述の特例の適用も含めて考えると、一般の方が自分で申告するにはそれなりにハードルが高くなりますので、信頼できる税理士に相談されるのも一考かと思います。

 

まとめ

離婚に伴い財産分与がなされた場合は、

もらった側・・・原則として所得税・贈与税は課税されない

あげた側・・・不動産を渡した場合は確定申告が必要。譲渡益がある場合は課税される可能性がある

ということを覚えておきましょう。

 

それから、もらった側が約18億円の財産をもらっても「贈与ではない」とされた判例を参考までに下記に引用しておきます。

これは、地主の旦那さんが離婚を渋る奥さんに「財産の半分をあげるから別れてください」とお願いしてようやく離婚が成立したものの、自分に億単位の譲渡所得税がかかることにびっくりして、「財産分与したもののうち不動産部分はすべて贈与だから、税金を払うのは自分ではなくてもらった奥さんのほうです!」と税務署を訴えた事件です。

※贈与税の納税義務者はあげたひと(贈与者)ではなくもらったひと(受贈者)になります。

東京高裁平成8年(行コ)第157号所得税更正処分取消請求控訴事件(棄却)(控訴人上告)【税務訴訟資料第228号26頁】

【判示(1)~(3)】
第1 当裁判所も、<旦那さん>の請求を棄却すべきものと判断するが、その理由 は、控訴理由に鑑み、次のとおり付加するほかは、原判決理由欄に記載のとおりであ るから、これを引用する。
1 <旦那さん>は、右引用に係る原判決の事実認定を論難するが、原判決挙示の各証拠によれば、原判決理由欄記載の事実を容易に認定することができる。
<旦那さん>は、<奥さん>は財産分与の意味を知らなかつたから、本件土地等を財産分与として取得したとの認識がなかつた旨主張するところ、確かに甲第1号証の 1によれば、調停離婚当時<奥さん>は財産分与という言葉の意味を正確に理解して いなかつたことは認められるが、原判決挙示の証拠によれば、<旦那さん>からの財産の譲渡が離婚に伴う財産の給付であり、不本意な離婚の代償であると認識していた ことは明らかであり、その実質は財産分与にほかならず、しかも<奥さん>と<旦那 さん>及び双方代理人が出席した家事調停において成立した調停調書には、これら財産の譲渡が「離婚に伴う慰謝料、扶養費を含む財産分与として」行うことが明記され ているのであるから、これら財産の譲渡が財産分与に当たることは明らかである。
【判示(4)】
2 <旦那さん>は、本件財産分与額は極めて高額であり、分与財産の大部分は<旦那さん>が父から承継したものであるから、本件財産分与は、財産分与としては明らかに過当 なものであり、過当部分は贈与に当たるものであるから、右部分について譲渡所得税の対象とすることは許されないと主張する。
確かに、本件財産分与の総額は、前認定のとおり時価にして18億円を超えるものであつて、極めて高額であることは事実であるが、<旦那さん>の総資産からすれ ば、半分以下にとどまるものであり(配偶者の相続分が2分の1以上であることを想起すべきである。)、このことに<旦那さん>と<奥さん>との婚姻期間、婚姻中の生活状況、離婚に至る経緯及び離婚後の子供の養育関係等(この点の原判決の認定は、挙示の証拠によつて十分認められ、<旦那さん>の論難は採用できない。)を総合勘案すれば、本件財産分与に係る財産の譲渡が財産分与として過当なものとはいえないこと、引用に係る原判決の理由欄記載のとおりであり、本件財産分与が財産分与 に仮託した財産処分(贈与)と認めることはできない。

※<旦那さん><奥さん>部分は読みやすくするために引用者が置き換えた部分です。
※このあと最高裁へ上告されますが、棄却されています。

 

編集後記

財産分与を決める際には税金のことも考慮しましょう、という内容で書いてみました。

ともすれば感情的になりがちな場面が多い離婚の現場ですが、離婚後の税金のことについても冷静に考慮することが必要かと思います。

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