小さな会社と個人のお客様に特化している会計事務所です

お客様から寄せられた感想はこちらをご覧ください

青色事業専従者給与の金額はいくらまでOKなの?【判例で検討】

松田篤史
WRITER
 
この記事を書いている人 - WRITER -
松田篤史
東京都国分寺市で開業している税理士。小さな会社と個人事業に特化した会計事務所を経営しています。 毎日の通勤電車が苦痛だったため都下で開業しました。マラソンが趣味なのでよく小金井公園を走っていますw
詳しいプロフィールはこちら

個人事業主の節税方法としてよく使われるもののひとつに「青色事業専従者給与」があります。

生計を一にする親族に給与を払って経費にできる特例ですが、いったいいくらまで支給してよいものなのでしょうか?高額な給与を支給しても経費として認められるのでしょうか?

青色事業専従者給与とは?

事業専従者控除(青色申告の場合は青色事業専従者給与)は所得税法の特例規定なんです

そもそも個人事業主の所得については世帯単位課税で考えられています。

所得税法第56条 事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例
居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入しないものとし、かつ、その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。この場合において、その親族が支払を受けた対価の額及びその親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、当該各種所得の金額の計算上ないものとみなす。

前半部分を要約すると、個人事業主である夫(あるいは妻)の仕事を手伝った生計一の配偶者や親族に何らかの対価を払ったとしても、それは個人事業主の経費になりませんよ、ということになります。
この場合の対価とは給与、家賃、外注費など名目は様々でしょうが、どのような名目であっても「経費にならない」ことにかわりはありません。

もし、奥さん(あるいは夫)や子供に給与などを払って経費とすることができた場合、超過累進税率である所得税においては、家族に対して給与を払うことで所得を分散し、適用される税率を引き下げて節税することができてしまいます。
現行の所得税法はそういった行為を認めていないわけです。

この原則的な考え方に対する「特例」として「事業専従者控除(青色事業専従者給与)」というものがあります。

具体的な事業専従者控除(青色事業専従者給与)の取扱い

大前提として、「事業専従者が存在する」ことが必要です。
では事業専従者とはどういったひとが該当するのか?については下図をご覧ください。
事業専従者の図解 001

※なお、次に該当する人のその該当する期間は、たとえ事業に従事していても、専従期間に含まれません
1 高校、大学等の学生又は生徒である者(ただし、事業に専ら従事することが妨げられないと認められるときは、学生又は生徒である期間も専従期間に含まれます)
2 他に職業がある者。(ただし、その職業に従事する時間が短いなどの関係で事業に専ら従事することが妨げられないと認められる場合には、たとえ他に職業があっても、専従期間に含まれます)
3 老衰、心身の障害、疾病等によって事業に従事する能力が著しく阻害されている者

 

奥さん(あるいは旦那さん)や子供など、その個人事業主の稼ぎで生活しているひと(15歳以上)がいて、その個人事業主の仕事を6ヶ月以上手伝っている場合、事業専従者となるわけです。
なので、たとえ生計一の配偶者や子供がいたとしても、個人事業主の仕事を専従的に手伝っていない場合はだめです。

では、事業専従者の要件を満たす家族がいたとして、彼らに払った給与はどのように経費になるのでしょうか?

下記のフローチャートを御覧ください。
事業専従者控除 青色事業専従者給与 図解 001

特例の中身は、対象となる個人事業主が白色申告なのか青色申告なのかによって取扱いが変わってきます。

白色申告の場合、事業専従者「控除」といって、払った金額に関係なく一定額が経費となります。
ということは、支払額0円だったとしても、事業専従者がいれば所定の算式で計算した金額が経費になるわけです。
(逆に言うと、いくら高額な給与を払ったとしても経費にはならないということですね)
この場合、必要経費となった事業専従者控除の金額は、事業専従者の給与収入とみなされます。
(なお、当然ですがこの場合源泉徴収の必要はありません。もらった側では給与収入とみなされますが、現実にはその金額を払っていない場合もありますので。)

青色申告の場合、青色事業専従者「給与」といい、実際に支払った金額が経費となります。
適用を受けるためには、所定の期限までに「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する必要があります。

国税庁
青色事業専従者給与に関する届出手続

届出書には支給予定の金額を記載する欄があります。
つまり、この金額を超えて支給した給与は経費として認められないということになっています。

「思ったより業績がよくなったから、追加で奥さんに給与を払って節税」などの行為を安易にやりにくい仕組みとなっていますね。
ただし、届出書に記載した範囲内で支給すればOKなので、ちょっと多めの金額を記載しておくとよいでしょう。

 

実際にいくら支給できる(=経費として認められる)ものなの?

実際に支払った給与の額を経費にできる青色事業専従者給与ですが、金額は青天井ではありません。
あくまでも、「その事業専従者が行っている業務内容に関して適正だと認められる金額」までが経費です。
また、大前提として事業専従者の要件を満たしていない場合は、当然に経費とはなりません。
では、「適正な金額」や「事業専従者か否か」について実際はどう判断されるのでしょうか?

判例を3つほど確認してみましょう。

判例その1(青色事業専従者ではないと判断されたケース)

山口地裁昭和55年(行ウ)第2号所得税更正処分等取消請求事件

要約

ビルを所有し家賃収入がある夫(原告)の妻Aを青色事業専従者として給与を支払っていましたが、妻Aの仕事は専業主婦の片手間でやっている程度の業務量であり、また他の会社の役員として年間200万円以上の給与を得ていたことも考慮すると、その不動産事業に「専ら従事している」とは言えないとされてしまいました。

 

2 Aに対する青色事業専従者給与について
Aが原告の妻であり原告と生計を一にすることは当事者間に争いがなく、(中略)Aは、本件の各係争年を通じ、…ビルの事務所貸借人からの賃料受領、各賃借人ごとの電気料金・上下水道料金・塵芥処理料・冷暖房料・専用部分の清掃料の算定請求・受領、..ビルの経費の支払、銀行預金の預入及び引出、上記人出金に関するメモの作成、通路等の共用部分の清掃、ビルの設備の故障等の処理、入居者募集並びに賃借人相互間の部屋の変更等に係る業務に従事していたことが認められる。
(中略)そこで、右認定のAの従事業務につき、より仔細にその内容、事務量等を検討してみると、(中略)Aの業務のうち、主要な部分を占めるのは、賃料や電気料金の集金等に係るものであるが、..ビルの事務所賃借人は、昭和50年が9名、昭和51、52年が各8名と少数であつたうえ、そのうち昭和50、51年は各3社(中略)、昭和52年は2社(中略)が原告の関与する会社であつたこと、賃料は約半数の賃借人が振込入金で持参払は残りの約半数に過ぎなかつたし、Aが居合せなかつたときは、(中略)事務員がこれを受領していたこと、電気料金は各部屋毎にメーターが設置されており、これを毎月1回計測しさえすれば容易に算定できたし、他の上下水道料金、冷暖房料金、塵芥処理料に関しては毎月計算の必要はなく、あらかじめ各部屋の広さや人数により定めた基準で算定した固定額を請求すればよく、その算定のための計算は半年に一度程度で足りたこと、専用部分の清掃代は一部の賃借人についてのみであつたし、その金額も外部雇用の清掃婦の請求金額に洗剤等の消耗品費を加算すればよかつたこと、これら料金の請求は毎月まとめて一度にこれを行ない、その請求書用紙は3枚複写式で領収書も同時に作成できたこと、電気料金等についても賃料と同様に振込入金していた賃借人もあつたし、持参払の場合にAが居合わせなかつたときは、賃料同様(中略)事務員がこれを受領していたこと、原告が支払う電気料金等..ビルの経費についても自動振替払としていたものがあること、入出金のためAが銀行に赴くのは毎月2回ないし4回程度に過ぎなかつたこと(中略)、またこれら入出金についてのメモ作成といつても、預金通帳に現われた入出金についてはその余白に事由を記入し、その余の入出金については別途メモ程度に記録しておくという極めて簡略なものに過ぎず、振替伝票の作成や総勘定元帳への記帳といつた事務は、一切を確定申告前に1年分を一括して(中略)事務員ないし税理士に行なわせていたこと、以上の事実が認められる。
..ビルの通路等共用部分の清掃に関しては、週2回程度は外部雇用の清掃婦により清掃が行なわれていたこと、(中略)..ビル程度の規模のビルにおいてAが更に清掃にたずさわる必要性はほとんどなく、Aが清掃業務に従事したのはごく例外的な場合であつたと推認でき、証人Aの証言中毎日モツプをかけて清掃していたとの部分は到底措信できない。
..ビルの設備の故障等の処理に関し、Aは、故障等の事例として、ドアが故障したこと、電気が切れたこと、冷暖房の性能が落ちたこと、台風で樋がはずれたこと、水道栓の締め忘れによりビルが浸水したこと、ガス器具の取り換え、水道や便所がつまつたことがある等挙示する(同証人の証言)がいずれも抽象的に挙示するにとどまつており、仮にそれらが過去において生じたとしても、本件係争の昭和50年ないし昭和52年の間に生起したものであるかどうかは全く不明であるし、(中略)一般的にもAが挙示するような故障等が1年の間に頻繁に発生するものとは到底考えられない(中略)Aが行なうのは、そのほとんどが指示をあおぐための原告への連絡や、業者等への修理依頼といつた単なる連絡的事項に過ぎないことが認められる。
入居者の募集及び賃借人相互間の部屋の変更等に係る業務に関しては、(中略)Aの担当する業務の多くは原告の指示を受けて行なう比較的単純な連絡的業務であつたと言うべく、証人Aの証言及び原告本人尋問の結果中右認定と異なる部分はにわかに措信できない。
以上の事実を認めることができ、これらに鑑みれば、Aの業務のうち中心的な部分を占める賃料や電気料等の集金その他入出金に係る事務自体その事務量はごくわずかであり、短時間に片手間的に処理し得るものと言えるし、その他の業務に関してもいずれも例外的一時的なものに過ぎず、それらのために要した延べ従事日数はわずかなものであつたと言い得べく、Aが原告の業務に従事のために常時出勤を要したとは到底認められない。しかも、(中略)Aは、主婦として原告家庭の家事一切を切り盛りしていたもので、..ビルへの出勤時刻や勤務時間といつた定まつたものはなく、まつたく..ビルに出向かない日もあり、出向いた場合もその時間は概ね午後0時半から午後4時ごろまでの家事の遂行に差しさわりのない範囲で出向いていたに過ぎないうえ、..ビルに出向いたからといつて、..ビルの業務にのみたずさわつていた訳ではなく、(別の)株式会社の業務にも従事し、同会社の役員として、昭和50年・234万7,500円、昭和51年・207万円、昭和52年・207万円もの報酬を得ていたことが認められるのであつて、これらを総合すれば、Aは主婦としての仕事の合い間をぬつて..ビルに出向いていたものの、その多くは(別の)株式会社の業務に従事し、..ビルの業務は、更にその合い間をぬつて片手間的に従事していたものに過ぎないと認めるのが相当であり、(中略)以上認定の事実によれば、Aが原告の不動産賃貸業に専ら従事したものとは到底認められないし、事業専従者について所得税法施行令は、165条において事業に専ら従事するかどうかの判定につき従事期間の制限を規定するのみで、専従者の範囲についてはこれを特に規定していないけれども同条2項が、他に職業を有する者(その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者を除く)については、その期間を専ら従事した期間には算定しない旨規定していることに照らしても、Aが所得税法57条1項の青色事業専従者に該当しないことは明らかである。従つて、Aに対する給与については、その給与額について判断するまでもなく、これを必要経費とは認めることができないものである。

不動産所得を有するご主人(=原告)が、奥さん(=A)を青色事業専従者として給与を払って経費としていましたが、「奥さん、その実態だと青色事業専従者とは言えないでしょ?だから全額経費として認めません」と判断されたケースです。

裁判においては、実際に行っていた仕事の内容を細かく確認し、その程度の仕事量だと、事業に専ら従事したとは認められないと判示しています。

また、奥さんが別の株式会社の役員としてそれなりの給与をもらっていることから「他に職業を有する者」であることも認定し、その仕事をした期間を専ら従事した期間とは算定しない点からも、事業専従者ではないとしています。

判例その2(青色事業専従者であると判断されたケース)

平成16年6月28日裁決

要約

次にご紹介するのは、個人事業主の医師(請求人)の妻Bに対する青色事業専従者給与が適正であると認められたケースです。

妻Bは病院のスタッフとしての仕事とは別に、不動産賃貸業を営む会社の代表取締役としての仕事もありましたが、そちらの業務は大した量ではないので、他に職業を有する者ではない=病院スタッフとして専ら従事していると判断されています。

また、病院スタッフとして給与に見合うだけの働きをしていることを数々の証拠から証明しており、結果として支給金額は適正であるとされました。

ロ) 青色事業専従者給与
(前略)
(A) Bは(中略)(不動産会社)の代表取締役として、同社が営む不動産賃貸業において経常的に従事しなければならない事務は、振込入金された家賃の管理程度であって、その事務量はわずかであり、このことからすると、請求人が営む事業に専ら従事することの妨げにはならないと認められる。そうすると、Bは、他に職業を有する者ではあるが、所得税法施行令第165条第2項第2号のかっこ書に規定する者に該当すると判断するのが相当である。
(B) 次に、Bが請求人の営む事業に従事した状況を検討すると、次のとおりである。
(中略)同人の事業への従事状況については以下のとおりである。
(a) (中略)関係資料を総合してみれば、Bが毎月4回から6回に分けてファームバンキング入力処理をし、入力前の処理等を含め、1回当たり5時間ぐらい従事したとする証拠資料の記載内容は、事実に即しているものと認められる。
(b) (中略)給与計算に当たり、Bは、(中略)有給休暇ノート、給与計算ノート及び給料台帳をいずれも手書で作成し、有給休暇日数の管理、給与の支給総額の計算、社会保険料・源泉所得税・住民税の計算、給与計算後における従業員ごとの給与明細表の封入・送付及び給与所得・退職所得の所得税徴収高計算書の作成・納付の事務を行っていることが認められる。さらに、当審判所が調査したところ、従業員の年2
回の賞与の支給額及び年1回の昇給については、Bが複数の案を作成して請求人と相談している事実も認められる。
(c) (中略)Bが従事していた事務として、窓口収入表の検算及びレセプト日計表との照合、請求人等の立替払に係る精算事務、職員採用時等の面接及び転退職に伴う社会保険関係書類等の作成、職員の勤務状況等々についての婦長との打合せ、請求人講演資料等の作成、医師会・官公庁等への提出書類の作成、冠婚葬祭への対応、税理士事務所等への対応及び関係書類のファイリングの事務に従事していることがいずれも認められる。また、請求人の総勘定元帳等は、Bが事前に点検等した①ファームバンキング入力控、②領収書・請求書つづり、③窓口収入表及び④預金通帳・給料台帳写しを基に、関与税理士事務所が作成しているものであり、加えて、(病院)に経理を担当する従業員がいないことを考えれば、診療報酬の入金事実の確認及び資金繰りについての請求人との打合せにもBが従事していたことが認められる。
(中略)
記録簿は、(中略)平成14年10月1日から同年11月13日までの44日間におけるBの請求人の営む事業への従事状況を記載したものであり、その従事時間は234.5時間となっているが、記載内容について当審判所が調査したところ、これを裏付けるものとして提出された証拠資料やBが平成11年から同13年までに請求人の事業に従事したと説明する内容には矛盾するものはなく、むしろ本件調査中の従事状況に即して記載されていることが認められる。
C 以上のとおり、Bは、(中略)窓口収入の管理等、支払事務、給与計算事務、人事管理事務、各種関係機関への届出事務、冠婚葬祭への対応等の請求人の営む事業に幅広く携わっており、このことは、事業に関連して作成・保管された各種資料の大部分がBのものと認められる筆跡により記載されていること、記録簿に記載された従事状況及び(病院)の従業員の答述等の状況からも、請求人の営む事業に専ら従事していたことは明らかである。
D そうすると、Bの請求人の営む事業に対する従事状況は、同人が事業に従事した程度がごく微少とはいえず、各年分について、所得税法第57条第1項に規定する青色事業専従者に当たると判断するのが相当である。また、各年分の青色事業専従者給与の額については、上記1の(4)のニのとおり、青色事業専従者給与に関する届出書の範囲内であり、当該金額が不相当であるとの事情も認められない。したがって、この点に関する原処分庁の主張には理由がない

 

判例その3(青色事業専従者給与の金額が不当に高額と判断されたケース)

名古屋地方裁判所平成11年(行ウ)第40号所得税更正処分等取消請求事件

要約

次に紹介するのも、医師が家族に対し青色事業専従者として給与を払ったケースです。
収入が多いので、青色事業専従者給与の額も高額になりがちです。そこを税務署も注目しているということでしょうか。

個人事業主である医師(原告)の娘乙に対し、診療所の事務員の給与として年間500万円以上を支払っていましたが、業務内容に比べて金額が不当に高額であるとして、半分以下しか経費として認められなかった事例です。

 ア 乙は、平成3年3月に大学を卒業し、同年4月から原告の診療所にて事務員として勤務し始めたが、友人の紹介を受け、平成6年5月から並行してAにもアルバイトとして勤務するようになった。乙は、Aにおいて、平成6年は89日、平成7年は123日、平成8年は86日勤務したが、そこでの勤務時間は午前9時30分から午後5時30分までであり、帰宅は午後6時30分ころになるのが通例であった。
イ 原告は、乙に対し、大学卒業者の一般的水準と原告が考えた金額を給与として支給することとし、平成5年は525万円、平成6年ないし8年は各年540万円(月額給与30万円に年間賞与6か月分を加えた金額)を支給した。
ウ 乙は、原告の妻とともに、原告の診療所の専従者として、カルテの整理・確認、診療報酬請求手続等の一般事務に従事する外、毎週金曜日には、受付事務をも担当していたが、勤務の実績を明らかにする出勤簿等の書類は作成されなかった。
エ 原告は本件各事業年度の所得税確定申告に際し、妻に対する給与も青色事業専従者給与として申告しているが、その額は年額900万円である。他方、原告は、自分や妻が出資して設立した同族会社の有限会社C(以下「C」という。)に対しても、診療報酬明細書の作成、集計、提出等の診療報酬請求手続の事務を委託し、平成6年は224万円余、平成7年は227万円余、平成8年は213万円余の委託料を支払っていた。

以上の事実によれば、原告の診療所の一般事務がどのような内容でその量がどの程度あるのか、そのうちどの部分がCに委託されていたのか、残りの事務をどのように乙と原告の妻とが分担していたのか等、本来ならば適正な給与額の決定に影響を与える諸事情がどのように考慮されたのかについては明らかでないうえに、乙に支給された専従者給与額は、並行してAに勤務し始めてかえって増加していることなどの事実を考慮すると、原告による乙の給与額決定は、提供された労務の実態を反映したものではないといわざるを得ない。
そして、乙に支給された給与額のうち必要経費として認められる適正な金額を決定し得る資料が存在しない以上、被告がこれを算出するにつき類似同業者との比準により推計する方法によったことは誠にやむを得ないというべきである。
(3) そこで、次に被告による推計方法について検討するに、(中略)最終的に残った同業者例の正確性、信頼性及び原告との類似性は十分に担保されているというべきである。

そうすると、(中略)被告の推計方法は、合理的と判断することができる。

 

このケースでは、他でアルバイトもしている娘さん(=乙)を青色事業専従者として年間540万円ほどの給与を支払っていたところ、「提供された労務の実態を反映したものではないといわざるを得ない。」と判断され、被告(=税務署)が類似業者のデータに基づき計算した推計値(136万円〜208万円)が適正な給与額であり、それを超える金額は経費として認めない、とされました。

判決文によれば、娘さんは年間で86日〜123日を9時30分〜17時30分勤務のアルバイトに出ており、残りの時間で病院の受付事務やカルテの請求漏れチェックをしていたそうです。診療所の診療日数が240日前後だったことを考えると、普通に考えて「本当に専ら従事していたの?」という疑問がわきます。

また、原告(=お父さん)は「娘は4年制の女子大を卒業しており、同程度の学歴を有する女子事務員の賃金に見合う給与として540万円は過大とはいえない」と主張していますが、医師のほかに准看護師3名、事務員8名(しかも全員パート)規模の診療所の事務員に普通はこの金額の給与は払わないでしょう。東証一部上場企業だとしても、新卒の事務員に540万円の給与を払う会社はそうそうないですよね。

この勤務実態でこの金額を適正というのはかなり無理があるように思います。

まとめ

青色事業専従者給与の適正額について、所得税法57条では

その給与の金額でその労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度、その事業の種類及び規模、その事業と同種の事業でその規模が類似するものが支給する給与の状況その他の政令で定める状況に照らしその労務の対価として相当であると認められるもの

と定めています。

つまり、一般的に「この業界でこの仕事内容だとこれぐらい」という常識的な金額から大きく乖離していると「適正でない」とされる可能性がでてくるわけです。

もちろん、実際に重要な仕事をしている場合、それに見合う給与を払うことは全然問題ないと考えますが、その場合、税務署からつっこみが入ったときに合理的・常識的・客観的に説明できる資料を書面などできちんと残していくことが非常に重要です。

なお、実際には専従者としての仕事をしていない専業主婦や子供に専従者給与を払って経費にするのはアウトですね。

また、専従者以外の仕事をしているから必ずダメというわけではなく、たとえ他の仕事をしていたとしても、専従者としての業務に支障がない程度の仕事量であれば、その点はクリアできます。

なお、事業収入2,000万円ぐらいまでの個人事業主でよくみかける青色事業専従者給与の金額としては、月8万円程度です。
これは、源泉徴収が不要な金額の範囲内であり、(私の事務所がある国分寺市近郊の自治体だと)住民税も非課税になるという点、さらには金額の多寡について問題とされにくい額であるということを示唆していると思われます。

 

編集後記

2歳の長男が最近よくみせる「強いこだわり」。
いつもと違う道で行くと怒って引き返そうとしたり、公園のブランコに40分以上乗ったり。
急いでいるときなどイライラしてしまうこともあるのですが、この本を読んでその理由が腑に落ちました。
原因がわかってからは、前ほどイラつくこともなくなり、むしろ成長の大切な過程を今みせてもらっているのだ、と思えるようになりました。
子供が保育園、幼稚園に通う年代のパパ・ママにオススメです。

●経理、決算、税金のことでお困りの個人のお客様や小さな会社の経営者の皆様へ

松田篤史税理士事務所は、小さな会社と個人のお客様に特化した会計事務所です。
良いサービスを良心的な価格で提供しています。

 

◎顧問契約プラン
代表税理士の松田が、顧問税理士として経理や税金にとどまらず経営に関するあらゆることのサポートを行います。
税理士が定期的に訪問し、税務に関する幅広い対応を行うことを希望されるお客様はこちらをご検討ください。
税理士本人がやさしく丁寧に対応致します。
弊社の場合、すでに他の税理士事務所と契約されているお客様が、税理士変更の際にご契約いただくことが多いプランです。
月額報酬20,000円(税抜)からのお求めやすい価格となっています。

 

◎個別相談プラン
税金のことについて税理士に手軽に相談できるプランです。
「突然税務署から連絡がきた!どうすればいい?」
「ビジネスを始めようと思っており税金のことについて知りたい」
「いままで無申告だったけどこれからは申告したい」
etc・・・
税金や税務署のことについて知りたいこと、聞いてほしいことがあるが身近に相談できる税理士がいない・・・そのような方向けのプランです。
税理士がやさしく丁寧に相談に乗ります。
税理士に相談したいが顧問契約するほどの規模ではないお客様や、税理士と会うのは初めて・・・というお客様が利用されることが多いプランです。
料金は1回90分間で15,000円(税抜)です。

 

◎独立開業応援プラン

個人事業主として開業3年目までのお客様向けのサービスです。
顧問契約プランに含まれるサービスを1年間限定のお得な料金で提供しています。
個人事業主として開業したが、経理や税金については信頼できるプロにまかせたい・・・というお考えのお客様にご契約いただくことが多いプランです。
月額報酬10,000円(税抜)で確定申告まで行います。

 

◎決算&申告プラン

年1回の決算と申告だけを税理士が代行するプランです。
会計データをお客様のほうで入力いただくことで、よりお得な料金でご利用いただけます。
税務相談は不要なお客様、ひとり社長の会社様、年間取引量の少ない会社様などとの契約が多いプランです。
お客様のほうで会計データの入力をしていただければ、法人の場合90,000円(税抜)〜で決算と申告を代行致します。

この記事を書いている人 - WRITER -
松田篤史
東京都国分寺市で開業している税理士。小さな会社と個人事業に特化した会計事務所を経営しています。 毎日の通勤電車が苦痛だったため都下で開業しました。マラソンが趣味なのでよく小金井公園を走っていますw
詳しいプロフィールはこちら