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見落としがちな障害者控除の適用範囲まとめ

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東京都国分寺市で開業している税理士。小さな会社と個人事業に特化した会計事務所を経営しています。 毎日の通勤電車が苦手だったため都下で開業しました。ランニングが趣味なのでときどき野川沿いを走っています。
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所得税や住民税の所得控除項目のひとつとして「障害者控除」というものがあります。

納税者本人のみならず、そのご家族が障害者の場合にも、一定の金額を納税者本人から所得控除できる可能性があるものですが、適用が受けられることを知らなかったり、適用額が間違っていたりするケースをたまに見かけます。

また、身体障害者手帳をもっていないと障害者控除を受けられない・・・と思っている人も多いですが、税法における障害者控除の適用対象者はもう少し広範囲に及びます。

そこで今回は、障害者控除についてまとめてみました。

障害者控除とは?

概要

障害者控除とは、納税者本人、同一生計配偶者、扶養親族が障害者に当てはまる場合に、一定の金額を所得控除することができる制度です。

控除額は以下のとおりです。(平成30年4月時点)

障害者 特別障害者 同居特別障害者(※)
所得税 27万円  40万円 75万円
住民税 26万円  30万円  53万円

※「障害者」と「特別障害者」の違いについては後述します。

※納税者本人が、特別障害者である同一生計配偶者や扶養親族と同居している場合、その配偶者や扶養親族は「同居特別障害者」となります。

例えば、特別障害者に該当する扶養親族がいても、同居していない場合の障害者控除の金額は40万円(住民税は30万円)ですが、同居している場合は障害者控除の金額は75万円(住民税は53万円)となります。

具体的には・・・

・納税者本人が障害者のケース

・納税者と生計一の配偶者(妻や夫)が障害者のケース

・納税者と生計一の親(この場合、配偶者の親も含む)が障害者のケース

・納税者と生計一の子や孫が障害者のケース

・納税者と生計一の兄弟(この場合、配偶者の兄弟も含む)が障害者のケース

・納税者と生計一の子や孫の配偶者が障害者のケース

などが実務では目にすることが多いパターンでしょう。

なお、納税者本人以外のパターンとしては、同一生計配偶者や扶養親族であることが条件となっています。

具体的には納税者と生計一である、事業専従者ではない、合計所得金額が48万円以下である、6親等内の血族及び3親等内の姻族、などの条件があります。

詳しくは以下もご参照ください。

同一生計配偶者→こちらの8や9をチェック

※令和2年以降、合計所得金額の要件は38万円以下→48万円以下になります。

扶養親族→こちらの2をチェック

それから、障害者控除に年齢は関係ありません。

よくある勘違いとして、扶養控除(16歳以上)と障害者控除を混同し、ご自分が養育されている小さなお子様が障害者控除の対象になるにもかかわらず、障害者控除を受けられないと勘違いされている場合があります。

例えば、お子様の年齢が10歳だったとして、その場合扶養控除は受けられませんが、障害者控除は受けることができます。

障害者と特別障害者の違い

障害者控除における障害者と特別障害者の定義(根拠となる法令)

所得税や住民税で障害者控除をうけるためには、税法が定める「障害者」「特別障害者」に該当することが必要です。

その定義について、所得税の場合は、所得税法施行令第10条に定められています。

所得税法施行令第10条①(障害者とは)

法第2条第1項第28号(障害者の意義)に規定する政令で定める者は、次に掲げる者とする。

一 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者又は児童相談所、知的障害者更生相談所(知的障害者福祉法(昭和35年法律第37号)第9条第6項(更生援護の実施者)に規定する知的障害者更生相談所をいう。次項第1号及び第31条の2第14号(障害者等の範囲)において同じ。)、精神保健福祉センター(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)第6条第1項(精神保健福祉センター)に規定する精神保健福祉センターをいう。次項第1号において同じ。)若しくは精神保健指定医の判定により知的障害者とされた者

二 前号に掲げる者のほか、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第45条第2項(精神障害者保健福祉手帳の交付)の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者

三 身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)第15条第4項(身体障害者手帳の交付)の規定により交付を受けた身体障害者手帳に身体上の障害がある者として記載されている者

四 前3号に掲げる者のほか、戦傷病者特別援護法(昭和38年法律第168号)第4条(戦傷病者手帳の交付)の規定により戦傷病者手帳の交付を受けている者

五 前2号に掲げる者のほか、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成6年法律第117号)第11条第1項(認定)の規定による厚生労働大臣の認定を受けている者

六 前各号に掲げる者のほか、常に就床を要し、複雑な介護を要する者

七 前各号に掲げる者のほか、精神又は身体に障害のある年齢65歳以上の者で、その障害の程度が第1号又は第3号に掲げる者に準ずるものとして市町村長又は特別区の区長(社会福祉法(昭和26年法律第45号)に定める福祉に関する事務所が老人福祉法(昭和38年法律第133号)第5条の4第2項各号(福祉の措置の実施者)に掲げる業務を行つている場合には、当該福祉に関する事務所の長。次項第6号において「市町村長等」という。)の認定を受けている者

所得税法第10条②(特別障害者とは)

法第2条第1項第29号に規定する政令で定める者は、次に掲げる者とする。

一 前項第1号に掲げる者のうち、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者又は児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター若しくは精神保健指定医の判定により重度の知的障害者とされた者

二 前項第2号に掲げる者のうち、同号の精神障害者保健福祉手帳に精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行令(昭和25年政令第155号)第6条第3項(精神障害の状態)に規定する障害等級が一級である者として記載されている者

三 前項第3号に掲げる者のうち、同号の身体障害者手帳に身体上の障害の程度が一級又は二級である者として記載されている者

四 前項第4号に掲げる者のうち、同号の戦傷病者手帳に精神上又は身体上の障害の程度が恩給法(大正12年法律第48号)別表第1号表ノ2の特別項症から第3項症までである者として記載されている者

五 前項第5号又は第6号に掲げる者

六 前項第7号に掲げる者のうち、その障害の程度が第1号又は第3号に掲げる者に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている者

具体的な「障害者」と「特別障害者」のケース

条文だとわかりにくいので、以下に具体例をまとめました

 
該当するケース 障害者 特別障害者
身体障害者手帳を持っている場合 3級〜6級 1級、2級
精神障害者保健福祉手帳を持っている場合 2級、3級 1級
療育手帳(愛の手帳、みどりの手帳、愛護手帳などの名称で呼ばれているケースもあり)を持っている場合 B(3度、4度) A(1度、2度)
戦傷病者手帳を持っている場合 右記以外 特別項症〜第3項症
原子爆弾被爆者で厚生労働省が発行する認定書を持っている場合 常に特別障害者となる  常に特別障害者となる
精神上の障害により事理を弁識する能力に欠く常況にある者 常に特別障害者となる  常に特別障害者となる
常に就床を要し、複雑な介護を要する者 常に特別障害者となる  常に特別障害者となる
65歳以上で市町村長等の認定を受けている者 右記以外 市町村長等により特別障害に該当すると認定を受けている場合

実務上よく見かけるのは身体障害者手帳をお持ちのケースです。この場合は、級によって障害者か特別障害者かを判断します。

同様になんらかの手帳や認定書をお持ちの場合は、それに基づいて障害者控除の有無を判断します。

例えば、東京都にお住まいで発達障害のお子様がいらっしゃる場合、「愛の手帳」という名称の療育手帳をお持ちの場合があります。

この場合、認定が1度、2度であれば特別障害者として、3度、4度の場合は障害者として、障害者控除の対象になります。

それから、判断に迷うのは最後の3つのケースです。単に「寝たきりで介護をしている家族がいる」などというだけでは障害者控除の対象にはなりません。

ときどき「要介護認定を受けているから障害者控除をしたい」という質問を受けることがありますが、要介護認定を受けているというだけでは障害者控除の適用はできません。

具体的には、市役所等に連絡して、障害者控除の認定をしてもらう必要があります。

この場合、住民票がある市区町村に連絡して、事情を説明し障害者控除の対象となるかどうか、またどのような手続きが必要かを確認してみてください。

※手続きの基準や詳細は自治体によって異なります。確定申告時期になって慌てないよう、早めに問合せをしておくとよいでしょう。

このように障害者控除を受ける前提として、手帳を発行してもらったり、対象者であることを認定してもらう必要があります。

この場合、そういった事務を行うのは税務署ではなく住所地の都道府県や市区町村です。

ご両親の介護をしていたり、発達障害のお子様がご家族にいらっしゃるケースなど「もしかして障害者控除の適用があるのかな?」と疑問を持った場合、まずは自治体(都道府県や市区町村)の福祉関連の部署に相談してみるとよいでしょう。

障害者控除の受け方

障害者控除は年末調整か確定申告で受けられる

障害者控除を受けるためには、会社で年末調整してもらうか、自らが確定申告を行う必要があります。

毎年確定申告している人の場合、申告書第一表の所得控除欄のなかに障害者控除の欄がありますので、該当する控除額を記載するとともに、第二表の障害者控除欄に対象者の氏名を記載し、さらに特別障害者に該当する場合にはその氏名を丸で囲むだけです。

一方、会社員で年末調整しか行っていない人の場合は、会社に提出する扶養控除等申告書に障害者控除を受ける旨を記載し、それを受け取った会社の担当者が年末調整を行う中で障害者控除を適用してくれる・・・という流れになります。

なお、年末調整で適用した場合でも確定申告で適用した場合でも、市区町村へはその情報が流れる仕組みになっています。

従って、住民税において障害者控除を受けるために別途手続きを取る必要はありません。

会社に知られたくない場合は?

年末調整で適用を受ける際に「会社に障害者控除の適用を知られたくない」というニーズもあると思います。

この場合は、会社に扶養控除等申告書を提出する段階では障害者控除については何も記載せずにおいて、会社から源泉徴収票をもらったあとで自らが確定申告をすることで適用を受けるという方法があります。

「確定申告」と聞いただけで「面倒くさい」「難しい」というイメージをお持ちになる方もいらっしゃるかもしれませんが、eTaxの普及もあって、確定申告のハードルは昔に比べると格段に下がっています。

日頃PCを使い慣れているひとであれば、国税庁ウェブサイトの確定申告書等作成コーナーで質問に応える形で申告書を作成し、プリントしたものを郵送する方法があります。

PCに慣れていない、あるいは全般的によくわからない場合は、資料を持参して確定申告シーズンの税務署へ行けば、職員が申告のやり方を教えてくれますし、その場で申告書を提出することもできます。

3月になると混み合ってきますが、「2月中に行く」「月曜日(休日あけ1日目)を避ける」「天気が悪い日に行く」ことを意識すると比較的空いています。

どのくらいの節税になるかというと、例えば、所得税の適用税率5%(住民税は10%)のひとが障害者控除を適用した場合、

所得税:27万円×5%=13,500円

住民税:26万円×10%=26,000円

合計:39,500円

の節税になります。

※節税のメリットを享受する前提として、一定額以上の所得があり、そのままだと納税額が発生することが必要です。

イメージとしては、所得税を13,500円以上納めるひとが、障害者控除を適用されることで納税額がそれだけ減少する・・・という感じです。もともと所得が少なく納税額が発生していない人の場合は、あえて障害者控除を適用する必要はありません。

まとめ

例えば所得税の税率が5%の人の場合、障害者控除を行うことで所得税と住民税あわせて約4万円ほど税額が減少します。

収入があって所得税の税率が高いひとや、特別障害者や同居特別障害者に該当する場合には、より多額の税額が減少します。

障害者の方やそのご家族に対し国が認めている優遇措置ですので、該当するケースでは忘れずに申告したいところです。

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