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商売繁盛祈願!の初穂料は経費になるのか?

松田篤史
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松田篤史
東京都国分寺市で開業している税理士。小さな会社と個人事業に特化した会計事務所を経営しています。 毎日の通勤電車が苦痛だったため都下で開業しました。マラソンが趣味なのでよく小金井公園を走っていますw
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新年に神社にお参りして商売繁盛を祈願するひとはたくさんいると思います。
ではその際に支払う初穂料や玉串料は経費になるのでしょうか?

お祓い

初穂料・玉串料とは

日頃神仏にあまり縁がないひとでも、新年になると年中行事の一環で神社にお参りし、色々願い事をしたり、おみくじをひいたり、破魔矢を買ったりする方はたくさんいらっしゃいます。

同様に、会社や個人事業主の方が商売繁盛を願って新年に参拝することはよくあることです。
その際、お賽銭だけでなく初穂料や玉串料を払って商売繁盛・社運隆昌を祈願する方も多いでしょう。昇殿し、神主さんに祝詞をあげていただき大幣でさらっさらっと祓ってもらったあとで、木札をいただく、というあれです。

この初穂料や玉串料、最近は神社のウェブサイトをみると丁寧に値段が書いてあって、金額によってもらえる木札やお守りの数が違ったりします。有名な神社だと数万円〜十数万円という感じでそれなりの金額になります。

商売繁盛を願ってお金を払い、お祓いというサービスを受け、木札という物品を得ているのですが、これは会社や個人事業の経費になるのでしょうか?

 

会社の場合

結論→寄附金

国税庁タックスアンサーNo.5262

(前略)ただし、次のような事業に直接関係のない者に対する金銭贈与は、原則として寄附金になります。

(1) 社会事業団体、政治団体に対する拠金
(2) 神社の祭礼等の寄贈金

措置法通達61の4(1)ー2

事業に直接関係のない者に対して金銭、物品等の贈与をした場合において、それが寄附金であるか交際費等であるかは個々の実態により判定すべきであるが、金銭でした贈与は原則として寄附金とするものとし、次のようなものは交際費等に含まれないものとする。(平6年課法2-5「三十一」により改正)

(1) 社会事業団体、政治団体に対する拠金
(2) 神社の祭礼等の寄贈金

会社の場合は、国税庁のサイトにこのように明示されているため、寄附金として経理しておけば問題ありません。
なお法人税の計算上、資本金や所得の金額を基準に計算する寄附金の損金算入限度額がありますので、会計上は費用となっても法人税の計算上は損金にならない、という可能性はあります(資本金が大きい会社やたくさん儲けている会社ならば、初穂料だけなら全額損金になる場合が多いでしょう)

 

個人事業主の場合

結論→家事費・家事関連費(事業主貸)

会社であれば、税法上の限度額はありますが寄附金として経理し、経費にできます。
同様に、商売をしている個人事業主であっても経費にできそうですが、ちょっと取扱いが異なります。
結論としては、経費にするのは難しいです。
以下に裁判例を紹介します。

 

判例その1

広島地裁平成13年10月11日判決【税務訴訟資料 第251号 順号9000】

(納税者)
いずれもQ神社への玉串料、R神社への祈祷料、熊手の購入費用であるところ、これらの支出は、原告の個人的な信仰や精神的安寧のためではなく、あくまでも司法書士としての「商売繁盛、売上向上」や従業員の交通安全を目的としたもので、原告の事業遂行上必要な経費である。ちなみに、法人の場合には、これらは当然、必要経費として処理されており〔租税特別措置法61条の4(1)-2〕、これとの対比上も必要経費性が認められるべきである。
(国)
事業との関連性または事業遂行上の必要性が認められないか、若しくは、事業の遂行上の必要性のある部分が明らかでないから、必要経費に算入することはできない。
(裁判所)
原告は、上記各支払のうち、平成5年1月11日分、各11月19日分、平成6年11月18日分、平成7年1月31日分、11月20日分の神社への祈祷料等の支払や熊手の購入費用については、司法書士としての「商売繁盛、売上向上」や従業員の交通安全を目的としたもので、原告の事業遂行上必要な経費であると主張するが、これらは宗教的色彩を強く持つ行為であって、原告の業務との関連性、必要性を欠くことは明らかである。よって、原告の上記主張は採用できない。

※ちなみに、「神社への祈祷料等の支払」額は1,000円〜31,000円ほど、「熊手の購入費用」は8,000円〜8,500円ほどでした。

※このあと最高裁まで争われたあと差戻控訴審までいきますが、上記の争点については判断に変更はありませんでした。

 

判例その2

東京地裁平成23年1月28日判決【税務訴訟資料 第261号-14(順号11604)】

寄附金について
(ア) 原告(納税者)の主張
原告は、平成18年に、I神社に対し、玉垣奉納初穂料として60
万円の寄附をしている(以下、この60万円を「本件寄付金」という
。)が、これは、マンションのオーナーとして地域社会との関係を円
滑に保つことが事業にとって必要であるというだけでなく、I神社の
宮司から入居希望者の信用状況を入手できるというメリットがあるか
らである。
したがって、本件寄付金は、本件不動産業務にとって必要なもので
あるから、原告の不動産所得の計算上必要経費として認められなけれ
ばならない。
(イ) 被告(国)の主張
本件寄付金は、I神社の玉垣が倒壊するおそれがあることから、こ
れを改修するために、I神社が広く一般から奉納料を募ったものであ
ることがうかがえる。そうすると、本件寄付金は、家事費に該当する
ものであり、所得税法37条1項に規定する不動産所得を得るため直
接に要した費用又は本件不動産業務について生じた費用と認めること
はできず、原告の不動産所得の計算上必要経費の額に算入することは
できない。
(裁判所の判断)
本件寄付金について
原告は、本件寄付金は、本件不動産業務にとって必要なものであるとして必
要経費として認められるべきものであると主張する。
しかし、証拠(乙44)によれば、本件寄付金は、愛媛県四国中央市にある
I神社の玉垣の改修に伴って奉納されるものであり、奉納により、自己の名が
刻まれた玉垣が設置されるというもので、その費用の余剰金が玉垣の修理や同
神社の運営費用に充てられるというものであると認められるから、本件寄付金
の支出が、本件不動産業務の遂行上必要な費用であるということはできない。
本件寄付金を支出することで、地域社会との関係を良好に保つことができるな
どの利点があるとしても、それは事実上の効果でしかなく、また、本件寄付金
の金額が60万円であって、原告が申告した平成18年分の賃貸料収入合計2
000万円(乙54)と比べても高額であることも考慮すると、上記のような
事実上の効果をもって、これを本件不動産業務の遂行上必要な支出であるとい
うことはできない。
したがって、本件寄付金は、これを原告の不動産所得の計算上必要経費の額
に算入することはできない。

※初詣の初穂料とは少し異なりますが、やはり神社に対して支払ったものの経費性が否認されたケースです。

「判例1」の納税者は、会社の場合に寄附金となる根拠(「措置法通達61の4(1)ー2」)を持ち出して自分(=個人事業主)の場合も同様に経費だよっ!と主張をしていますが、裁判所からは「あなたの信仰の問題であって商売とは関係ないでしょ」とあっさり否定されています。

 

まとめ

同じ商売をしていて神社に初穂料をはらった場合、会社なら経費、個人事業主なら経費じゃない(と否認される可能性が高い)という違いがあるわけです。なぜでしょうか?

これは、会社というものがそもそも商売をして儲けるために存在しているのに対し、個人の場合は「商売人としてのあなた」と「それ以外のあなた」が混在していて、神社にお参りして初穂料を納める行為は、商売人としてのあなたの行為とは限らないでしょう(そのへんを明確にわけて第三者に書面で合理的に説明できないよね?あなたの頭の中までは裁判所はわかりませんので)ということでしょう。

ちまたで、「個人よりも会社のほうが経費をつけやすい」ということを嘯くひとがいますが、例えばこういうことを指しているのかもしれませんね。

 

編集後記

私の場合、以前は年末年始に帰省して山口市の山口大神宮へ初詣に行っていたのですが、結婚して家族ができてからはその時いる場所の近くの神社へお参りするような感じです。
昨年は府中の大國魂神社へお参りしましたが、今年はどうしようかな・・・。

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